自分の好きなことの追求、向き不向きと向かい合うこと、そして大企業で働くということ

梅田望夫さんのエントリについて、ここ2日考えていた。仕事から帰り、さて意見をまとめようと思っていたら、続けざまにエントリが入っており、一読後にとりあえず寝た。起きたところで考えたまとまったわけではないが書いてみたい。

これらのエントリは、後半は対象も限られ始めたし、梅田さんも就活中、数年後に就職を迎える学生、そして新入社員に向けて書いていると思うが、好きなことや向き不向きを大して考えずに過ごしてきてしまった人たちには戸惑いもあるだろう。
しかも、そういった人たちには、自分は大企業向きではない、自分のやりたいようにやるからベンチャーが向いてるに違いない、という安易な結論を生み出しやすい面もある。

あえて書く必要もないだろうが、梅田さんのこれらのエントリは、自分の好きなことを追求し向き不向きと向かい合い、その上で大企業で働くことを選択するのが本当にベストかというのを問いかけてる。自分が大企業に身を置いていて、かつ、学生時代に真剣に好きなことを追求したわけでもなく、なんとなく就職したので、変なフィルタがかかって誤読も甚だしいかもしれないけど。

しかし、仮に好きなことを追求しているところで、社会、特に大企業が形成している村社会というのは学生からは本当に見えづらく、そこで自分の好きを追求できるのか、適応できるのかは、やはり入ってみないとわからない。わからないけど、ある程度の指針はあって、それが梅田さんが挙げた下のチェックリストのようなものだろう。

  • 与えられた問題(課題)を解く(解決する)のが好き。その問題(課題)を解く(解決する)ことにどういう意味があるかとかよりも、その問題が難しければ難しいほど面白いと思う。
  • Whatへの「好き嫌い」やこだわりがあまり細かくなくおおらか。一緒に働く人への「好き嫌い」があまりない。そして苦手(つまり「嫌い」)を克服するのが好き。
  • 尋常でない体力(特に何十年も長時間労働ができる持久力)を持ち、そこが競争優位になる世界が好き。
  • 匿名性を好む。「これは自分がやったことだ」というような意志表明(自分の名前で仕事をすること)にあまり興味を持たない。むしろ一人ではできない大きなことを仕事ではしたいと考える(たとえば世界中に普及する自動車の開発に関与したというようなことを好む)。
  • パワーが好き。政治的行動が好き。責任感が強い。いずれは組織の長になってそのパワーを行使することで何かを成し遂げたいと思う(社会貢献みたいな達成、共同体の家族も含めた幸福にコミットするとかも含めて)。
  • 組織の一員であることの「気楽さ」、「安心感を持ちつつ生活できる」ことが好き。
  • 短期決戦型勝負よりも長期戦のほうが好き。
  • 「巨大なものが粛々と動いていく仕組み」みたいなものが好き。工場が好き。プラントが好き。巨大建造物が好き。社会のルール作りみたいなこと(立法っぽいこと)が好き。
  • 「これが今から始まる新しいゲームだ」と「ルール」を与えられたとき、そのルールの意味をすぐに習得してその世界で勝つことに邁進する、みたいなことが好き。
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20070402

更に、これらのチェックリストも適応しようと思えば適応できることが多い。さて、それでは何を基準に選択すれば良いのだろうか。

参考になるかどうかわからないけど、自分の経験を踏まえると次のような感じになる。対象がバラバラだけど、列挙してしまいたい。就職が数年後の学生には何も言うことはないし、自分は学生時代は適当に過ごしてきたので何も言えない。

  • 就活中の人へ。就活で大企業の人と話す機会もあると思うが、その会社が好きなんだなというのが滲み出ている人と話す。本音で話す。自分がこうしたいというのを伝える。本音で話していると大企業特有の没個性の文化を必ず感じることができる。そこで違和感を感じたら、おそらく大企業は合わない。
  • なんとなくIT系の大企業に就職した新入社員へ。今月は研修が多いだろうし、同期と飲みに行く機会も多いだろう。ただ、その間に真剣に自分が就職した会社を見つめる。会社の人を観察するでも何でもいい。自分がそこに居ることをイメージすること。そこで不安の方が勝ったら黄色信号かもしれない。直感でもいいから、この会社と自分は合わないと思ったら、本当に合わない。
  • 入社数年経ったが、自分には大企業は合わないとはっきりと感じている人へ。・・・そりゃ自分だ。省略。

これから先は大企業へ入社したが、自分には合わないと感じてしまった人へ。

大企業は一度入社してしまうと、否が応でも会社の波に巻き込まれる。合わないと感じても、とりあえず数年は頑張らないと転職するにも認めてもらえなさそうと思い、居続けることを選択する人もいるだろう。でも、数年頑張ってもおそらく充実感はない。(仮に社内での評価が良かろうとも)それよりも、好きを追求し続けている同世代と広がり続けるギャップにへこむ事の方が多い。

会社で好きなことができなかったら、帰ってから頑張ろうと考えても、大企業はそんなに暇ではない。頑張っても一日中好きに没頭している人にはなかなか追いつけない。

結局、合わないと早期に気づいた人はとてもラッキーで、思ったら即実行で辞めることだ。居続ける事を選択し、数年経ってしまった人は今からでも遅くない。


こうはいうけど、自分がまさに後者だったりする。大企業最大の魅力は人がたくさんいることで、素晴らしい関係を築ける同期もたくさんいることだ。その出会いは間違いなく人生でかけがいのないもであり、失うのは恐い。

しかし、それと自分の好きを追求することは別なんだ。自分は1977年生まれで今年で30になるわけだが、歳を重ねれば重ねるほど、自分の好きを追求できない環境で好きを追求するのは難しくなる。本当は難しくないけれど、歳を重ねると色々なものを抱え込んでしまうから、自分で難しくしてしまう。

結局、一番大事なことは自分の好きを真剣に追求すること、真剣に向かい合うこと、そこなんだと思う。その結果、大企業を選択すること、転職を選択すること、居続けることを選択すること、ベンチャーを選択すること、起業を選択すること、家業を継ぐこと、ニートになることなどなど、何を選択してもそれはきっとベストだ。一番残念なのは、全てをなんとなく過ごすことだ。

梅田さんの一連のエントリは、まだ社会に出ていない人には真剣に考える良い機会だと思うし、既に社会に入っている人にも改めて考える機会を与えてくれていると思う。